――地域共生社会における施設の役割を再定義する**
共生社会を目指す福祉施設にとって、地域の医療・教育・福祉・自治体・住民など、幅広いパートナーとの協働は欠かせません。
東京都福祉サービス第三者評価には、地域連携や協働の取り組み状況が明確に示されており、これは地域福祉の視点から見た「地域との関係性の現状」を客観的に把握するための貴重なツールです。
評価を通じて、たとえば
- 地域行事への参加やボランティアの受け入れが限定的である
- 地域団体との情報共有が不足している
- 医療・学校などとの連携に偏りがある
といった課題が浮かび上がります。
第三者評価は、地域との協働状況を体系的に点検し、施設が地域の中でどのような役割を果たしていくべきかを再整理できる“地図”のような役割を持ちます。
――ここからは、この導入で示した考えをさらに深め、第三者評価を活用して地域資源との協働を強化するための戦略と実践方法について解説します。
■ なぜ「地域協働」は重要テーマなのか

利用者の生活は、施設だけで完結するものではありません。
高齢者支援、子育て支援、障害福祉、教育、医療、生活困窮支援…
現代の福祉課題は複合化しており、単一の機関では対応しきれないことが増えています。
だからこそ、意図的に地域協働を進めることで以下の価値が生まれます。
- 施設が地域から必要とされ続ける
- 地域課題の解決に貢献できる
- 他機関連携によって支援の幅が広がる
- 職員の専門性や視野が広がる
共生社会の実現には、地域の多職種・多主体との協働が不可欠なのです。
■ 第三者評価は「地域連携の棚卸し」ができる

第三者評価の地域協働に関する項目は、施設の協働状況を客観的に可視化してくれます。
● 評価項目が“地域とのつながりの構造”を示してくれる
評価を通じて、
- どの分野と強くつながっているのか
- 協働が不足している分野はどこか
- 情報共有の仕組みはどうか
- 協働の目的は明確か
といった構造が見えてきます。
これらは、現場の“感覚”では分からない事実を、データとして把握するための重要な材料です。
■ “地域協働マップ”を作成する
第三者評価をもとに、地域協働の現状を見える化するための手順を紹介します。
■ ステップ1:既存の地域連携を棚卸しする
以下の領域ごとに連携を整理すると、見えにくい関係性が浮かび上がります。
- 医療機関(急変対応、定期連絡、リハビリ協働)
- 学校・教育機関(子ども支援や発達支援との連携)
- 他福祉機関(地域包括、社会福祉協議会、相談支援)
- 自治体(地域福祉計画、協議体、地域ケア会議)
- 地域住民・ボランティア(行事参加、見守り活動)
- 企業・団体(CSR活動、協賛、講座協力)
「誰と・どのくらい・何の目的で」関わっているかを整理すると、協働の全体像が掴めます。
■ ステップ2:評価項目と照らして課題を抽出する
評価結果をもとに、棚卸しした連携状況を分析します。
● よく見つかる課題例
- 地域行事参加はあるが共働企画が少ない
- 医療連携は強いが、学校や子育て支援とのつながりが弱い
- 地域包括とは情報共有はあるが、役割分担が曖昧
- ボランティア受入が単発で、継続性がない
評価は、協働の偏りと不足を客観的に示してくれる“鏡”になります。
■ ステップ3:地域協働の優先順位を決める
幹部層の重要な役割は、限られたリソースで“何を優先するか”を決めることです。

判断軸は次の通り:
- 地域ニーズの高さ
- 自施設の得意領域との相性
- 実現可能性(職員・時間・予算)
- 中長期的価値(地域の協力基盤が強化されるか)
● 例
- 医療連携は強固 → 次は教育機関との連携強化
- 地域サロンを設置し、住民参加を増やす
- ボランティア育成を中期計画に位置づける
“選ぶ力”こそ幹部の意思決定の重要な部分です。
■ 地域協働を強化する実践策
課題が明確になったら、具体的施策に落とし込みます。
● 実践策①:新たな協働先を開拓する
- 子ども家庭支援センター
- 地域子育て支援拠点
- 就労支援機関
- 民生委員・自治会
連携の“幅”を広げることが、共生社会の基盤になります。
● 実践策②:既存連携の“質”を高める
- 定例連絡会の設定
- 協働目的の明確化
- 情報共有ツールの統一
- 連携の評価会議の実施
“つながっているだけ”では協働とは言えません。
質の向上こそが支援の成果に直結します。
● 実践策③:住民参加の仕組みを整える
- 世代間交流イベント
- 地域サロンの共催
- 見守り活動への参加
- フェスティバル・講座の協働開催
住民と“つながる”段階から、“ともにつくる”段階へ移行させることが重要です。
■ 協働の進捗を可視化するためのKPI

協働の広がりを評価するために、以下の指標を設定すると効果的です。
- 新規協働先の数
- 協働事業の年間実施数
- 地域住民の参加人数
- 他機関からの相談件数
- 地域団体との会議・打合せ回数
- 多機関連携による成功ケース数
数値化することで“協働が広がっていること”が実感できます。
■ まとめ
第三者評価は、地域協働の現状を客観的に点検し、施設の役割を再定義するための強力なツールです。
評価結果を使って
- 協働関係の棚卸し
- 課題の分析
- 優先順位の選定
- 実践策の実行
- KPIによる評価
を行うことで、施設は地域にとって「なくてはならない存在」へと進化します。
共生社会の実現には、施設の枠を超えた協働のデザインが不可欠です。
第三者評価をその羅針盤として活かしていきましょう。









