やりたいことがわからない
「自己分析はしているけれど、やりたいことが見えてこない」「強みや弱みはなんとなくわかるけど、将来の方向性に結びつかない」——そんなモヤモヤを抱えている方が実は多くいらっしゃるのではないでしょうか。
本質的な自己理解には「価値観(コアバリュー)」の認識が不可欠です。
キャリアの選択肢に納得感を持てないのは、スキルや経験の棚卸しだけでは見えてこない“心の軸”を捉えきれていないからかもしれません。
この記事では、「価値観とは何か」「なぜ重要なのか」「どうやって見つけるのか」を具体的に解説していきます。

価値観とは何か? 〜コアバリューの定義〜
価値観(Values)とは、「何が大切か」「何を望ましいと感じるか」という個人の信念体系のことです。
もっとシンプルな言葉にするとその人が行動選択をする際の「判断の基準」と言い換えてもいいかもしれません。
特にキャリア選択においては、コアバリュー(Core Values)とも呼ばれ、目標の設定・行動選択・人間関係の構築などに深く関わります。
行動や選択の“根っこ”にある指針のようなものであり、自己方向性(Self-direction)や自己超越(Self-transcendence)といった概念と密接に結びついています。
価値観はどうやって形成されるのか
価値観は、生まれ持ったものではなく、家庭環境・教育・文化・経験といった要素の中で少しずつ形成されていきます。
特に、思春期から青年期にかけての経験は、個人の「何を大切にしたいか」に大きな影響を与えるとされています。
Milton Rokeach(1973)は、価値観を「経験によって獲得される、持続的な信念の体系」と定義しました。
さらに、Schwartz(1992)は、人間が文化や社会的文脈の中で共有する10の基本的価値を提唱しています。
例えば、人に騙された経験を沢山持つ人は「人は簡単に信頼してはいけない」という価値観を持つかもしれません。
しかし、その後の人生で多くの信頼できる人との出会いを通じて、その価値観はだんだんと変化していく可能性があります。
つまり、私たちの価値観は、人生を通じて育まれ、変化し続けるものでもあるのです。
なぜ価値観がキャリアに重要なのか?
価値観は「判断の基準」になる
「転職すべきか、この会社に残るべきか」「どんな職種を選ぶべきか」——こうした意思決定の場面で、最終的に私たちを突き動かすのは、自分の価値観に照らして“納得できるか”という感覚です。
Schwartz(1994)は、価値観が「人間の行動を選択・動機づける普遍的な構成要素」であると述べており、行動や判断に対する明確な軸になることがわかっています。
たとえば、「自由な働き方を重視する人」と「安定を大事にする人」では、同じ企業の求人情報を見ても評価の仕方が異なります。
この違いが、キャリア選択の納得感と継続性を大きく左右するのです。

価値観を自覚することのメリット
以下のような点で、価値観の自覚はキャリア構築にプラスに働きます。
- 意思決定のスピードと精度が高まる
- モチベーションが持続しやすい
- 他人との違いを受け入れやすくなる
- 面接での自己PRに一貫性が出る
Deci & Ryan(2000)の自己決定理論では、「自己の価値観に合致した行動は、内発的動機づけやパフォーマンス、幸福感に寄与する」とされています。
つまり、価値観に沿ったキャリアは、成果や人生の幸福にもつながりやすいのです。
価値観を知るための代表的な4つの方法
1. マインドマップで自己探求
頭の中の「大切なもの」を図式化して広げていく方法です。
自分の選択や行動の裏にある共通点を視覚化することで、コアバリューが浮かび上がってきます。
2. ジャーナリング(日記・内省)
日々の感情や出来事を言葉にすることで、何に反応しているかが明確になります。
自分が「心から嬉しい」「腹が立つ」と感じる瞬間には、価値観が強く現れます。
3. ジョハリの窓で他者視点を取り入れる
他人から見た「あなたらしさ」にヒントがあります。
自分だけでは気づけない価値観の片鱗を、フィードバックから得ることができます。
4. セルフコンパッションとメタ認知
自己受容(Self-acceptance)を深め、判断せずに自分を観察する姿勢が大切です。
メタ認知(自己観察)の力を高めることで、自分の思考・感情の背後にある価値観に気づきやすくなります。
まとめ:価値観を軸にキャリアの羅針盤をつくろう
「やりたいことがわからない」という悩みの背景には、「何を大切にしたいのか」が不明瞭であるケースが少なくありません。
価値観を言語化することは、自分にとっての内的自己認識(Internal Self-awareness)を高めることでもあり、キャリアの選択肢を整理するうえで強力なツールとなります。
納得のいくキャリアとは、スキルや実績の延長線上にあるだけでなく、自分の価値観に合致した道を歩むことです。
1人で価値観を認識するのは少し難しそうという方はご相談ください。
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